気持ち「もう隠せない」 英歌手シーランさん、親パレスチナ発言の前座降板めぐり自分の「間違い」認める 

黒い背景のステージ上でマイクを手に、観客に向かって話す灰色のTシャツ姿のシーランさん

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画像説明, サポートアクトによる「パレスチナに自由を」発言をめぐる問題の後、初めてステージに立ったシーランさん(19日、米フィラデルフィア)
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カール・ナスマン、ジョナサン・サポ、ナーディーン・サード

世界的に人気のイギリス人歌手エド・シーランさんは19日、自分のツアーでサポートアクト(前座)のラッパーがステージ上で「パレスチナに自由を」と発言したことをきっかけとする、そのラッパーの降板と、それに抗議する他のサポートアクトとバックバンド全員のツアー離脱、さらには自分への相次ぐ批判などについて、事態が起きてから初のステージの冒頭で、自分の「間違い」を認め、パレスチナ・ガザ地区やヨルダン川西岸地区での事態について「自分がどう感じているか、もうこれ以上、隠せない」と話した。

サポートアクトが全員いなくなったステージで、シーランさんは一人マイクを手に、「自分は決して、活動家のミュージシャンになりたくなかった。でも今回のことで、言論の自由と、この惑星上で一番複雑な政治問題についての、思いのこもった重要な議論の渦中に、身を置くことになった」とシーランさんは話した。

その上で、パレスチナ・ガザ地区の武装組織ハマスが主導した2023年10月7日のイスラエル攻撃を「恐ろしい」ものだと呼ぶ一方、ガザ地区での状況を「正当化できない」と批判した。

「パレスチナに自由を」とステージで発言したマックルモアさんを自分のツアーから降板させるという決定は、プロモーターによるもので、自分が決めたことではないとシーランさんは話した。シーランさんの「ループ・ツアー」の残りのアメリカ公演のチケット価格は下落し、売上も減っている。

シーランさんは聴衆に向かって、自分の音楽が批判されることは慣れているものの、「今週の批判は、もっと重要なことについてだった。僕は、難しい決断を迫られ、そして、間違いも犯してしまっている。本当に、本当に申し訳ない」と語った。

さらに、「イスラエルとパレスチナの状況について、自分がどういう姿勢なのか、そして今晩ここでこのコンサートをやることが、自分の姿勢を反映するのか、それについて話したい」と述べた。

「僕はこれまで音楽家として、政治的なコメンテーターにはいっさいならないようにしてきた。自分の音楽やショーは、分断ではなくて連帯のためのものにしたいので」とシーランさんは続け、「けれどもこれは、人道的な問題だ。そして、これについて自分がどう感じているか、もうこれ以上、隠せない」と話した。

シーランさんはその上で、2023年10月7日にイスラエルで起きたことは「恐ろしい出来事で、何世紀にもわたるユダヤ人の苦しみをさらに増幅させた」ものだと述べた。続けて、ガザで起きていることは「壊滅的で、正当化できないし、不均衡だ」と批判した。

「(ガザでの)甚大な破壊の規模はあまりにとてつもなく、民間人の命が失われて、子どもたちの命が失われて、心がずたずたになった。そして、ヨルダン川西岸地区で今、みんなの目の前で展開している、体系的な不正義は、決して見過ごせない」

「今のこの恐ろしい時代の被害者を助ける」にはどう貢献すべきか、その方法を検討しているのだとも、シーランさんは言い、「自分の知識が不十分なので、耳を傾け、学んでいる」と話した。

続けて、自分のコンサートは「今でも、誰でも歓迎される場所だ。ここにいる全員、自分と意見が反対の人と、肩を並べられる場所だ」と語ると、感極まった様子だった。

「このツアーが続くかどうか」も「そもそも自分がアーティストでいたいのかどうか」も分からなくなったのだとも言い、ファンを大切に思う気持ちからステージに戻ってきたのだと話した。

シーランさんはまた、コンサートの会場側がショーの内容や出演者を「事前に承認する」という発想を、「深く懸念している」と発言。観客はこれに拍手した。

シーランさんのツアーは今後、北米と南米各地での公演が予定されている。前回のツアーは史上最高額の興行収入を記録したが、今回の公演ではチケット価格が32ドルまで値下げされた。

一部のファンは、チケットの払い戻しを受けられたと話している。米コンサートチケット販売最大手のチケットマスターと、プロモーターのメッシーナ・ツーリング・グループは、払い戻しを実施したとは明らかにしていない。

黒いフェンスの外に大勢の人が集まっている

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画像説明, シーランさんのコンサート会場の前には、ガザ地区やヨルダン川西岸地区での行動についてイスラエル政府を非難する人たちが集まった(19日、フィラデルフィア)

会場の外には、イスラエルに抗議しパレスチナを支援する人たちが集まり、旗を振ったが、コンサートは概ね支障なく進行した。

抗議に参加した「クーパー」と名乗る男性は、パレスチナの人々の「闘争を支援するため」にここに来たと述べた。

「マックルモアのように、発言力があり、公の場で発言できるアーティストがもっと、パレスチナの人たちと彼らの解放闘争のために発言する必要がある。特にアメリカでは」と、クーパーさんは話した。

コンサートのチケットを持ち、開演前にBBCの取材に応じた少数のファンからは、コンサートを楽しみつつ、同時に言論の自由を支持したいという強い意志が感じられた。

シーランさんの発言を聞いたファンの一人は終演後、「彼は両方の立場をうまく説明してくれたし、誰もが満足して帰ると思う」と話した。別のファンは彼のスピーチを「とても誠実で、人々が聞きたかったのはまさに誠実さだったと思う」と評価した。

破壊されがれきと化した建物の壁面に、パレスチナの旗を肩にかけ片手をあげて歌うマックルモア氏の絵が描かれ、感謝の文字も書き添えられている。それを、頭をスカーフで覆った人が見ている

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画像説明, 「マックルモア、パレスチナのためにその声を使ってくれてありがとう」と書かれた壁画が、ガザ地区のがれきの中に描かれた(19日、ガザ市)

この論争は9月初旬、マックルモアさんが親パレスチナ派の抗議者たちに捧げる歌を披露し、ガザ地区での多大な死者数について、これはジェノサイド(集団殺害)だと呼んだことから始まった。イスラエルはこの主張を否定している。マックルモアさんはまた、イスラエルを批判することは、「自分のユダヤ人の兄弟姉妹」に対する批判ではないとも話した。

これを受けて、メッシーナ・ツーリング・グループは、マサチューセッツ州ボストンのジレット・スタジアムなど一部の会場が、マックルモアさんが引き続き出演するのなら、コンサート開催を拒否するとしたため、マックルモアさんを降板させたと述べた。

ジレット・スタジアムとアメリカンフットボールチーム、ニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーで億万長者のロバート・クラフト氏は、今後のコンサートについてマックルモアさんの出演を禁止したと認めた。

ユダヤ系のクラフト氏は、マックルモアさんの発言はヘイトスピーチだと非難し、「都合の良い情報だけを流し、ハマスの行動を無視している」と述べた。

これは言論の自由を委縮(いしゅく)させることだと抗議し、シーランさんのバックバンドとしててツアーに参加しているアイルランドのフォークバンド「ビオガ」、米歌手フィニアスさん、アイルランドのシンガーソングライター、アーロン・ロウさん、デンマークのバンド「ルーカス・グラハム」が、マックルモアさんへの連帯を示し、ツアーを離脱した。