ホワイトハウスの「宴会場」建設計画、控訴裁も差し止め トランプ氏は最高裁へ上告方針

ホワイトハウスの空撮画像。画像右側のイースト・ウィングは骨組みのようなものしか残っていない。周囲には黄色や、白と青のクレーンが見える

画像提供, Getty Images

Published
この記事は約 6 分で読めます

米ホワイトハウスに巨大な「ボールルーム(大宴会場)」を建設するという、ドナルド・トランプ大統領による総工費4億ドル(約630億円)の計画について、アメリカの連邦控訴裁判所は7日、計画の差し止めを命じた。この判断は、物議を醸しているトランプ氏の計画にとって新たな打撃となる。トランプ氏は最高裁判所へ上告する意向を示している。

控訴裁は7日、連邦議会の承認を得ていない地上部分の建設工事を差し止めた、下級審の判断を支持した。2対1の多数派意見で、「大規模な宴会場を建設すべきかどうかを決めるのは連邦議会であり、行政府が独断で判断すべき事柄ではない」と指摘した。

控訴裁は、「連邦議会は、特定の大統領の意向に合わせて、ホワイトハウスという国民の家を劇的に再設計・再編・再構築するための無制限の権限を、行政府に委譲してはいない」として、「各大統領は、ホワイトハウスおよび大統領公邸の一時的な居住者であり、所有者ではない」と述べた。

さらに、「(ホワイトハウスは)現職および将来のすべての大統領、ならびにアメリカ国民が利用できるよう設計・維持されており、(トランプ)大統領にはその不動産に対して行使できる憲法上の権限は存在しないし、そのような権限を主張することもできない」とした。

ただし、差し止め命令の発効を14日間先送りにし、トランプ政権が最高裁に上告するための猶予期間を設けるとした。

BBCはホワイトハウスと司法省にコメントを求めている。

上段に、以前のホワイトハウスの空撮写真、下段に、宴会場予定地を示したホワイトハウスの空撮写真が並んでいる。イースト・ウィングが取り壊され、ホワイトハウスの本館よりも大きな宴会場が建てられる計画

画像提供, Getty Images

建設計画をめぐっては、首都ワシントンの連邦地裁判事が今年3月回にわたり、宴会場の地下工事の継続を認める一方、地上部分の建設については差し止めを命じ、トランプ政権が控訴していた。

工事差し止めの請求は歴史的資産の保全団体「全米歴史保存信託(ナショナル・トラスト・フォー・ヒストリック・プリザヴェーション)」によるもの。同団体は昨年、建設計画について連邦議会の承認を得ないままホワイトハウスのイースト・ウィングを取り壊したトランプ政権を提訴した。

トランプ氏の反応

トランプ氏は控訴裁判断を、「ぞっとする」ような 「政治的動機による」決定だと、ソーシャルメディアで非難。反対意見を述べた判事の見解に言及し、この差し止め命令は「裁量権の露骨な乱用」にあたると主張した。

そして、軍やシークレットサービスは控訴裁の判断を国家安全保障上の脅威と受け止めていると述べた。

「この不当な判断は最高裁によって完全に覆されなければならない」と、トランプ氏は投稿。また、新しい宴会場の建設は予定より早いスピードで、予算内で進んでいるとも主張した。宴会場は、民間の寄付者たちが資金を提供する、米国民への贈り物だという従来の主張も繰り返した。

しかし、与党・共和党は、宴会場でのシークレットサービスによる警備を強化するためだとして、10億ドルの費用を納税者に負担させようとしていた。この計画は5月に、予算監視機関によって却下された

新しい宴会場について、トランプ氏は以前から「盛大なパーティーや国賓訪問の際に人々を受け入れる」のに必要で、「国家安全保障のためにも不可欠」だと主張してきた。

宴会場の地上部分には大規模な歓談スペースが、地下部分には安全保障施設が設けられることになっている。ホワイトハウスでは4月、毎年恒例のホワイトハウス記者協会(WHCA)主催の夕食会の会場付近で、銃を所持した男性が警備検査場を突破して発砲する、暗殺未遂事件が起きた。これを受け、トランプ氏は宴会場にこうしたスぺースを設ける必要があると強調していた。

ホワイトハウスは「国民のもの」と保全団体

全米歴史保存信託は、7日の控訴裁判断を歓迎。議会が動く「までは」、宴会場の地上部分の建設は一切行えないと指摘した。

同団体のブレント・レッグス会長兼最高経営責任者(CEO)は、「アメリカのアイデンティティーと民主主義の理想を象徴する、世界的ランドマークのホワイトハウスは、アメリカ国民のものだ」として、「全米歴史保存信託とそのパートナーは、すべてのアメリカ国民を代表して、このかけがえのない重要な建物を誇りをもって守る」と述べた。

トランプ氏は2025年7月に建設計画を発表して以降、宴会場について繰り返しアピールしてきた。計画が実現すれば、ホワイトハウスの構造が70年余りぶりに大きく変わるはずだった。

しかし昨年10月、1902年に建設されたイースト・ウィングをトランプ政権が取り壊して工事に着手したことから、法的な問題に直面し続けている。トランプ氏は当初、建設計画はイースト・ウィングの「近く」で行われると説明。イースト・ウィングそのものを取り壊すのではないとしていた。

政権の弁護団は、宴会場の建設計画に含まれる安全保障施設は、ドローンや弾道ミサイル、生物的危害やそのほかの脅威からホワイトハウスを守るために必要だと主張。大統領やその家族、スタッフを保護するために不可欠な変更だとしている。トランプ氏は7日、建設計画には防空壕や病院・医療施設、最高機密の軍事施設も含まれていると述べた。

一方、全米歴史保存信託は、ホワイトハウスを「かき乱す」ことを正当化する根拠は存在しないと反論。宴会場を設けることと、国家安全保障上の緊急事態には関連性がないと指摘した。

控訴裁は7日、今回の判断について、政府が「提案する宴会場の建設そのものが望ましいかどうかとは全く関係がなく」、将来的に宴会場を建設できるかどうかについて判断を示したものでもないとした。

そのうえで、「(差し止め命令が)意味するのは、憲法および法律が定める通り、被告側は地裁での速やかな訴訟の過程において、議会の承認なしに(建設計画を)進めることはできないということだ」とした。