イギリス国王夫妻、訪米開始 国王は議会演説で「民主主義の価値」守る意義を強調へ

アメリカとイギリスの両国国旗が左右に立つドアを前に、赤じゅうたんの上に並ぶ(左から)カミラ王妃、チャールズ国王、トランプ大統領、メラニア夫人

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画像説明, 米ホワイトハウスに到着したイギリス国王夫妻(左)と出迎えたトランプ米大統領夫妻(27日、ワシントン)
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ショーン・コクラン王室担当編集委員(米首都ワシントン)

イギリス国王チャールズ3世とカミラ王妃は27日、アメリカに到着した。4日間の公式訪問が始まった。イギリス君主がアメリカを公式に訪れるのは、エリザベス2世が2007年に訪れて以来。国王は連邦議会で演説し、「民主主義の価値」を守る意義を強調するほか、このところ緊張が続く英米関係の「和解と再生」を呼びかける見通し。

国王夫妻はメリーランド州のアンドリューズ統合基地に到着後、ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と妻のメラニア・トランプ氏に出迎えられた。

首都ワシントンでは25日夜に、大統領が出席していた行事の会場近くで銃撃事件が起きたことを受け、厳重な警備が敷かれている。

チャールズ国王は28日に連邦議会で演説する予定で、今回の攻撃に言及し、関係者を慰労する言葉を述べるとみられている。

国王は演説でさらに、国際的な課題が深刻化する時代にあって、民主主義の価値を守るために結束することが、これまで以上に必要だと訴える見通し。

国王は議会演説で、今の英米の間には意見の相違があるものの、「両国はこれまでに何度も、常に、協力し合う方法を見いだしてきた」と述べるとみられる。両国関係の「和解と再生」を呼びかけ、寛容、自由、平等という共通の価値を擁護する姿勢を示す見通しだ。

王室関係者によると、国王はそうした信念を守るため、北大西洋条約機構(NATO)を支援し、ウクライナを守ることなどの重要性を訴えるという。

国王はアメリカの連邦議員たちに対し、NATOは「寛大な精神と、思いやりを育み、平和を促進し、相互理解を深め、あらゆる信仰を持つ人々、そして無宗教の人々を尊重する義務」の上に築かれていると語る見通し。

イギリス国王夫妻が子ども2人から花束を受け取っている

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画像説明, アメリカに到着し花束の歓迎を受けるイギリス国王夫妻(27日、米メリーランド州アンドリューズ統合基地)

メリーランド州のアンドリューズ基地に到着した国王夫妻は、アメリカのモニカ・クロウリー首席儀典長や、イギリスのサー・クリスチャン・ターナー駐米大使たちに出迎えられ、子ども2人から花束を受け取った。

夫妻は続いて、ホワイトハウスへ向かい、トランプ夫妻に出迎えられた。ホワイトハウスの敷地内では現在、大規模な工事が行われている。

国王夫妻は、ホワイトハウスの「緑の間」で大統領夫妻と歓談した後、庭園に案内された。庭では、ミニチュアのホワイトハウスの形に作り直された新しい養蜂箱を見学した。チャールズ国王は養蜂に熱心なことで知られるだけに、国王の関心を引くための外交的演出だったと思われている。

緑色の壁紙や緑を基調としたじゅうたんや椅子で装飾された部屋で、茶菓子やティーセットが並ぶ テーブルを4人が囲み、個別の椅子に座って向き合った男性同士、ソファに並んだ座った女性同士でそれぞれ会話している

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画像説明, ホワイトハウスの「緑の間」で歓談する国王夫妻と大統領夫妻(27日、ワシントン)
白い花が手前に咲き、緑の木立が並ぶ合間に灰色の石が敷かれた空間が作られ、その上に白いホワイトハウスのミニチュアが、淡い緑色のテーブルに置かれている。左右に国王夫妻と大統領夫妻が並んで立っている。

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画像説明, ホワイトハウスを模した養蜂箱を見学する国王夫妻と大統領夫妻(27日、ワシントン)

今回の公式訪問はイギリス政府を代表してのもので、アメリカが独立250周年を迎える年に、両国の関係強化を図るソフトパワー外交の取り組みだ。

カミラ王妃は、両国の国旗を組み合わせたブローチを着けていた。このブローチは、エリザベス2世による1957年の公式訪問の際にニューヨーク市長から贈られたもの。1957年の公式訪問は、第2次中東戦争とも呼ばれる1956年のスエズ危機で対立した、米英関係を立て直すための外交使節としてだった。

チャールズ国王とカミラ王妃はホワイトハウスを出ると、在ワシントンのイギリス大使館で開かれた、600人以上が出席する園遊会に出席した。招待客は米英双方にゆかりのある、政治、科学、慈善、軍の関係者だった。

出された食事はサンドイッチとスコーンというイギリスの伝統的な軽食だったが、ビーフサンドイッチには外交的な意味合いがあった。最近合意された取引により、無関税で初めて輸入されたイギリス産の牛肉が使われていたからだ。

政界からは、アメリカのナンシー・ペロシ元下院議長、テッド・クルーズ上院議員、イギリスのイヴェット・クーパー外相らが出席していた。

カミラ王妃は、家庭内暴力に反対する団体の代表者たちと、しばらく立ち話をした。

「(自分たちの運動を)擁護してくれる存在はとても重要で、王妃はこの問題をとても重視している」。家庭内暴力の被害者を支援する団体「ハウス・オブ・ルース」のサンドラ・ジャクソン氏は、王妃に団体の活動について説明した後、BBCに話した。

木立を背に、青いジャケットと白いブラウスの黒人女性が取材に答えている。周りに女性が3人立ち、その後ろには大勢の男女がいる。
画像説明, ジャクソン氏(右)は、家庭内暴力に対するカミラ王妃の取り組みをたたえた

今回の国王夫妻訪米については、性犯罪者ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)の被害者と夫妻が面会すべきだとの声も出ていたものの、法的手続きに影響を与える懸念から実現していない。

ジャクソン氏は「その判断を尊重する」と述べ、カミラ王妃の活動を通じて家庭内暴力への注目が高まっていることを歓迎した。

同じく王妃と話した活動家のミシェル・デローヌ氏は、著名な人物がこの問題について公に語り、その重要性を高めていることは前進のしるしだと述べた。

国王は28日には、ホワイトハウスでの儀礼的な軍事歓迎の後、連邦議会で演説する。イギリス君主が米議会で演説するのは、1991年のエリザベス2世以来となる。

今回の訪問は、対イラン戦争をめぐり、イギリスが消極的だとトランプ氏がキア・スターマー英首相を批判するなど、米英関係が不安定な中でのもの。

ホワイトハウスで開かれる公式晩さん会には米英の政界や著名人が集まる見通しで、トランプ大統領も演説する予定となっている。